
クリス・オフィリ(Chris Ofili)
イギリス生まれのナイジェリア系黒人の画家 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート等の芸術大学で学び、ターナー賞を受賞し、アーティストの間ではよく知られた存在です。イギリスのマンチェスター出身、現在はトリニダード・トバゴにアトリエがあります。
彼を有名にしたストーリーはターナー賞に始まります。
わたしは2004年のベネチアビエンナーレのイギリス館で実際に作品を見た衝撃が今でも忘れられないです。2010年に開かれたテートの個展 、2014年のニューミュージアムに見られるように彼の作品は圧倒的な絵画力で現代美術界のトップランナーです。

ターナー賞とはなんなのか、ここで豆知識を。
わたしも2002年に実際に観にいったことがあるんですけど。とにかく4人のアーティストがすごく大きな美術館のスペースを与えられて、競いあってるような印象。
新しいアイデア、若々しい創造力にたいして、国を挙げてもり立てていこうという気概のもと、美術関係者がテレビ局を説得し、スポンサーを募り、2カ月間の展覧会を実施し、社会的に認知されるように努力してきた結果生まれんです。
自薦他薦の作家の名前がおよそ100人ぐらいノミネートされ、五人の審査員によって、リストから候補を4人にしぼられます。1998年のターナー賞ではファッションデザイナーのアニエスbがステージに上がり、の受賞者は「クリス・オフィリです」と発表しました。この様子は英国のチャンネル4のテレビ局が、夜8時半のゴールデン・タイムに実況中継したんです。
日本にこれに匹敵する現代美術の賞がないですよね。日本に賞は様々ありますが、結局これほどの権威と一般の人たちの注目を集める賞はないです。数年前から始まった日産アートアワードは可能性があるかもしれないけど、日本のアートが世界に文化を発信する日はいつ来るのだろうか?

1998年のターナー賞では、
クリス・オフィリだけが男性で、なおかつ彼だけが黒人でした。
タイトル「The Holy Virgin Mary(聖女マリア)」この作品が一躍有名なものにしたのですが、サクセスストーリーは「過激な展覧会」として美術界の歴史にも残る「センセーション(Sensation)」(1997-2000)というに出展されます。
これはイギリスのサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery) が企画したロンドン・ベルリン・ニューヨークの巡回展で、イギリスの若手のアーティスト(YBA’s)に焦点をあてたものでした。
作品が「キリストの母のマリアは黒人なんてありえないよ、台座は糞で象の糞がマリアさまの胸にのっているなんてやめてほしい」というように問題作品でした。1999年のニューヨーク巡回の際には、
当時のジュリアーニ市長がこれを展示したブルックリン・ミュージアムを訴えるという事態。
アート作品上での解釈の1つなのにも関わらず、キリスト教を陵辱したという理由で市長は同ミュージアムへ支援していた7億円を引き下げる裁判まで起こしていた。結局裁判ではミュージアム側の主張が通りましたが、この展覧会に出展した作家達はこれを機に有名になり、作品の価格が跳ね上がることとなったのです。
サーチ・ギャラリーはそれらのコレクションを売り、多大な利益を得たと言われています。
このサーチ・ギャラリーというのはイギリスの巨大な広告代理店の創業者の個人のコレクションから初めたアートギャラリー。
広告専門のサーチさんにとって展覧会を開催する前から価格高騰を予測し「クリス・オフィリが訴えられて有名になって価格が上がる」というシナリオをえがいたのかもしれません。
大きなアートイベントに合わせて綿密に立てられたギャラリーの収益計画、ひいては所属アーティストのブランド化の努力によるのです。
007 のスパイ映画のように国を挙げてイギリスブランドを推し進める大英帝国の錬金術ですね。
さて、話を元に戻しましょう。

クリス・オフィリ 作品
クリス・オフィリの作品はロンドンの黒人の若者にとって身近なロックミュージックなど様々な現代の社会・文化の現象をテーマにしています。
そしてどの作品もカラフルで陽気で表面にはビーズや雑誌の切り抜きなどが張り付けている。
しかしそのもっとも大きな特徴はすべての絵画が、本物の象の糞の上に乗っていることでしょう。

その頃、天性の色彩感覚にすぐれたアーティストを待ち望んでいたアートシーンに忽然と現れたのがクリス・オフィリだったのです。
これから先トリニダードに移り住んだオフィリが既視感をどうやって改変し、アップロードしていくのか楽しみです。
それは、どのアーティストのにも言えることです。ギャラリーや美術関係者の興味を捉え、どこまで勢力的に作品を産みだすことができるのか。それにかかっています。
作品を大きくするとか、大量に生産するなど挑戦しなければ重要な人達の目にも止まらないし、ギャラリーのビジネスパートナーにもなり得ないのです。
私たちアーティストは成功したアーティストたちの作品の作り方を勉強し、テンプレのように自分に当てはめて戦うのが成功への1番早い道です。
それではクリス・オフィリをもう少し掘り下げていきましょう。

象の糞の象徴
オフィリは1968年に生まれ、アフリカのルーツを主張したことはありませんでしたが、ナイジェリア系の家族に生まれました。
1992年、彼はジンバブエへの英国旅行奨学金を与えられました。その経験は彼を彼のルーツに再び結び付け、洞窟の絵画にある絶妙な装飾モチーフから彼の将来の作品にインスピレーションを与えます。
キャンバスにマチエールを加える方法として象を使用するという考えを持っていましたが、象徴的に言えば、象の糞がアフリカの作品はを彼のルーツを作品に含めるものになったのです。
象の糞は、十字架にかけられ壁に固定された絵画ではなく、絵がよりリラックスしたように感じさせます。それはまるで権威主義の美術界を解体するようでした。
そして作品は1994年にFrieze Magazineに象の糞を表示することになります。
アフリカのゾウは歴史的に西洋人の象牙のために壊されていたが、オフィリの絵画では象からの復讐を得ているという説もあります。
排泄物は臭いと腐敗を避けるために化学物質で処理されていますが、皮肉にも、絵画素材の糞はロンドン動物園が糞便を提供しているんです。
アフリカのビーズなどの装飾的な民族衣装が台湾で生産され、アフリカの織物がオランダから来るそうです、これは文化の分類を超える現代アートの表現を象徴しているのですよね。

それでは、わたしたちも制作に戻りましょう。
参照記事
- http://www.amepuru.com/entry/2014/12/22/143244
- http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/artscape/topics/9901/nanjo/turner.html
- https://jpn.worldtourismgroup.com/chris-ofili-exploring-african-diaspora-25526
- https://www.culturetype.com/2014/10/29/chris-ofili-presents-his-greatest-hits-at-new-museum/
動画
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