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驚いた!これだけはこの1枚だけは見てはいけない。ゲルハルト・リヒター、Gerhard Richterオープン初日に行ってきた【レビュー】

投稿日:2022-06-07 更新日:

皆さんこんにちは現代美術家の飯沼英樹です。ちなみに6月24日から西麻布のSNOW Contemporaryにて個展がありますのでよろしく。

さてオープン初日にゲルハルト・リヒター、国立近代美術館に行ってきました。

早速ですがそのレビューをお伝えしたいと思います。

ゲルハルト・リヒター展 まず1番良かった点。

作家自身が誰にも売らずにコレクションしている作品。フォトペインティングの名作が見ることができたこと。

朝1番、会場に入り展覧会の中程にあるフォトペインティングのコーナーへ直行した。

フランスパリのジョルジュ セントラルポンピドゥで見たフラワーは画面の右側から濃い緑の葉っぱの中にピンク色の花が描かれている作品である。

この作品はぜひ斜め下からしゃがんで画面を見てもらいたいです。ピンク色の写真の部分だけがエナメル質に反射しており、草の部分はマットな色で光が沈むように描かれている。そしてそこから左手に伸びている花の草の描き方に注目してほしい。筆で弾くように草の葉っぱを表現してあるのだが、その周辺を背景にあるクリームグリーンの絵の具によって輪郭線をかたどってある。この形態や背景を質感によって変えている表現はこの作品のみと言えるのではないだろうか。

振り返って右後方にある裸の女性像。展覧会の図録では16番にあたるものであるが、水浴者(小) 1994年の作品であるが、今まさに書き上げられたようなしっとりとした表面は見る人の心を掴むことでしょう。

ゲルハルト・リヒター、国立近代美術館、この展覧会の2番目に良かった点

展覧会の作品リストが年代順に番号を振ってあること。

現在のアブストラクトペインティングにはどのような経緯で描かれたのか?具象から抽象絵画に移っていく、そのプロセスを見るのはまるでピエトモンドリアンが抽象へと移行していたプロセスを追うようだ。実に絵画的な考察を展覧会の中で実験することができる。

何よりも驚くのが1番古い作品20代ぐらいの時、モーターボートと言う作品(1965年) 大きな油絵のキャンパス。雑誌の1ページをプロジェクターで壁に投影して描かれたと言うこの作品はリヒターを象徴する1枚である。

さて戦後ドイツではアメリカの影響もあるだろう、アンディウォーホルがジャクリーヌケネディの肖像をシルクスクリーンを作ったように、リヒターもまた写真でアメリカで起こった事件の犠牲者の写真でポートレート作っている。一見美しい女性像に見えるがキャプションを読むと驚きます。

さて、2番目に古い作品。私は15分の映像作品を初めから終わりまでしっかりと見届けた。

写真と絵画。この2つの大きな美術史的な問いに対しては答えを探しだそうと生きている。そのプロセスが15分の映像作品に込められているように感じた。ピンボケしたような写真からほんの少しだけ、後半10分過ぎたあたりだろうか、アトリエの風景が出てくる。金槌で何かを作る様子、ノコギリで何かを切る様子、クリエイティブな何かを作り出すプロセスを象徴するかのようなこの映像作品にこそ、リヒターが追求している写真と絵画の可能性を見ることができる。

ゲルハルト・リヒター、東京国立近代美術館この展覧会の批判されるべきポイント。

ビルケナウ

彼が記した本でも描かれているように、戦後ドイツを代表する画家としてドイツが戦争の間行ってきた残虐な行為。画家としてこれとどう向き合うか?それがリヒターにとって大きなテーマであった。何度も何度もそのテーマに挑戦したが挫折してきたと言う。今回展覧会には8点のうち4点が本物。残りの4点はレプリカと言う形で展示されているのだが、その展示室入って右側の壁に4枚の写真作品がある。これはリヒターが撮った写真ではなく、ビルケナウと言う名前のアウシュビッツ強制収容所で特別労務班がとったもので、絵画の元になった写真である。その写真はあまりにもグロテスクだ。もし小学生や中学生が見たらまずこの展覧会をトラウマとして残ってしまうのではないだろうか?この4枚のうち特に1番左の1枚。この1枚に関しては公開を再び考えるべきではないだろうか?作家自身が写真と絵画の関係性をテーマにしているからこそ、写真1枚が見る者を一瞬にしてまっさらにしてしまうインパクト。いくらそこに等身大以上の大きな油絵があったとしても1枚の小さな写真が見る人たちの不安を呼び寄せてしまう。写真の恐ろしさと言うのはこういうところにあるのだ。ドキュメンタリーや、ジャーナリズム。

この写真と言うインパクトにリヒターは絵画として挑んでいるのだ。

絵画だからできること。自分たちの民族が背負ってきた苦しい歴史、写真にしてもしまえば一瞬に説明されてしまうが、絵画と言う手法によって自分の心の中にある想いと筆そしてキャンパスと言う道具。マテリアルである絵の具を扱うことで感情と対話し、折り合いをつけ、導き出された答えが絵中にある。

さればこそ、そこにアウシュビッツで撮影されたと言う写真が展示される必要が本当にあるのかどうか、私は疑問である。

リヒター展。この展覧会の良かったポイントその3

グレーペインティング。灰色のペインティング。リヒターは灰色について「何もない事を示すのに最適である」と語るが、ローラーや筆、はけなどを使いながら、光による陰影までも作品に取り入れられてくる。1カ所から見るだけではなく様々な角度からグレーの作品を見ることで画面。そして絵画と言うものの意味を考えさせられる。光と反射と吸収を見てほしい。

ゲルハルトリヒター展。この展覧会の良かったポイントその4

カラーチャートの絵画。今回のは40センチ四方のブロックによって繋ぎあわされ組み立てられている。ケルンの大聖堂のステンドグラスのデザインを依頼されたりする中で、カラーチャートシリーズを作り上げた。まずここに選ばれた数10種類の色。色は作家の個性を表すといわれるが、実に繊細な色のチョイスをされている。黒も本当に黒とは言えず、白も本当に白とは言えない。赤黄色オレンジ緑。今までのリヒターの絵画に使われてきた色が取り出されて並べられているような感じがして実に興味深かった。

最後にゲルハルト・リヒターがドイツのアートの祭典、ドキュメンタで発表した作品の1つの作品が北陸富山県立美術館にあることをご存知だろうか?今回その作品は展示されていなかったが、抽象絵画にリヒターが移っていった重要なプロセスの作品と考えている。是非機会があれば旅行してみてほしい。今回の東京での展覧会では、ほかにもデジタルプリントされたストリップと名付けられたストライプの作品。ガラスの板にラッカー塗料を垂らしたシリーズ。鏡のようなシリーズ。ガラスのようなシリーズ。実に様々にアーティストとしての試みが実験された、その形跡がとても魅力的に展示されている。

ぜひ皆さんも足を運んでいただきたいと思います。

飯沼英樹(アーティスト)

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執筆者:hideki

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