【芸術家への5つの質問】道具、音楽、そして制作の原点にある「自分だけの居場所」

アートを生み出す背景には、言葉にできない感覚や、これまでの人生で積み重ねてきた記憶が密接に関わっています。私が大切にしている「道具」や「場所」、そして「ルーツ」についてお話しします。

1. 執着を手放し、手の延長となった道具たち

大学・大学院時代に揃えた、名入りの名刀と呼ばれる鑿(のみ)のセット。5年間のヨーロッパ留学を終えて帰国する際、なぜかそのセットだけが見つかりませんでした。おそらく、家具と一緒に捨ててしまったのでしょう。当初はひどく落ち込みましたが、ある整体師から「ものを失くした時は、それが身代わりとなって自分を成長させてくれる」と聞き、それは変わるためのチャンスなのだと信じることにしました。

今では道具への過度なこだわりはありません。とはいえ、鑿、チェーンソー、グラインダーは大切な身体の一部です。ドイツ製のスチール(STIHL)のチェーンソー、日立の電動工具、そして京都・四条河原町の老舗からスイス・ドイツ製まで、世界中の道具をミックスして「手の延長」として使いこなしています。

2. インディーズの音楽と最新の情報を取り入れる

制作中は、著作権フリー(コピーライトフリー)の音楽を好んで聴いています。アマチュアやインディーズの、新しい感覚で作られた楽曲にこそ価値と楽しみを感じるからです。また、Podcastで最新のアートニュースやマーケティング情報を仕入れることも欠かしません。常に社会の動向にアンテナを張るのが私のスタイルです。

3. 都会の喧騒、10畳の「自分だけの洞穴」

フランス留学時、街中に点在する空きスペースをアトリエとして使う経験を通じ、環境と表現の密接な関係を学びました。私が今、東京の喧騒の中で制作を続けているのは、都会のファッショナブルな空気感に自分自身がワクワクするからです。

中古物件を買い上げ、1階を防音リノベーションした15年来のアトリエ。広さは10畳ほどですが、私にとっては江戸時代の仏師・円空が籠もった洞穴のような聖域です。頭の中が不安でいっぱいになった時、この「自分だけの居場所」がどれほど大切か。地球上のどこかに、自分だけの為の場所を持つことを心からおすすめします。

4. 両親、そして祖父母から受け継いだ「形にする喜び」

私の原点は、幼少期の家庭環境にあります。七宝焼きや織物を嗜む母と、仕事の傍ら庭の作業場で手作りのおもちゃを作ってくれた父。両親からは「形を作り出す喜び」を教わりました。

また、松本の実家は薪風呂で、祖父が発明した循環式の風呂を愛用していました。市議会議員を務めた祖父と、保育園の園長だった祖母。社会的なメッセージを持つ現代アートを志す上で、彼ら家族が社会と向き合っていた姿勢は、私の作品の根底に深く流れています。